移住前、引き込まれていったハーブの「魅力」
香房の物語は、故郷である山口県を離れ、広島県でイベント会社に勤めていた時から始まります。
そのきっかけは、催し物会場で開催するハーブの先生の展示会の仕事でした。
「色々な香りがあって、効き目が生活に使えて、可憐な花を咲かせる。『暮らし』に役立つことがいっぱいある」。
仕事を進める中で、次第に東山さんはハーブの魅力に引き込まれていきました。
その熱は結婚して神奈川県に移住した後も冷めずに続き、植物園「グリーンライブセンター(東京都多摩市)」のハーブ研究科に入学。2年間通い、基礎科の1年でクラフトやハーブティ―の入れ方などの実学、翌年の研究科では座学で知識を深めます。その後、自宅である築250年の古民家で9年間「花とハーブのギャラリーショップ」を開催していました。
充実していた神奈川での生活。しかし、「畑は借りていたけど、のびのびと育てたくて、イチから思うように庭を作りたい」という思いから、夫婦で新たな「理想の土地」を求めて、出会ったのが今の物件。
「庭を作るのに広いし、静かで『水辺』のある景色が気に入った」と話します。敷地内に小屋もあり、泊まり込みで香房作りができるのも魅力的でした。
香房のはじまりは、土地の「開拓」から
物件を決めて移住するまでの1年半を、「神奈川から通いながら『開拓』していった」と話す東山さん。沼地に蔓延る山藤のツルが土地に根を張っていて、耕運機が使えず、鍬で1区画ずつ耕す日々。
ご主人の「都心からも近いし、イチから始めても何もない田舎とは違うと思う」という言葉に背中を押されて決めたいすみへの移住でしたが、長年慣れ親しんだ土地、友人や生徒さんがいる街を離れることに「(移住は)一大決心だった」と振り返ります。
4年前、「開拓」もひと段落して住み始めたいすみの地で「誰一人知り合いもいない、どのように香房を始めたらよいか」と不安を募らせました。
しかし、心配は無用でした。
移住して10日後、東山さんは移住相談などを通して知ったイベントの会場にいました。「神奈川に住んでいた頃は教室など忙しくて、楽しそうなイベントに参加できなかった。移住したら、自分が面白いと思う物には参加したかった」、そう考えて、「1年目は街の情報を知って、いろいろな人に会う生活をしていた」と持ち前の探求心で人々の輪に飛び込んでいくうちに、香房の名は市内だけでなく、周辺地域へと広がり始めました。
「未完成」の香房で描く未来のこと
「時間が経つと忘れられちゃうから、中途半端だったけど店をオープンしながら作っていこうと思いました」。
そう考えて始めた香房は2年前にアトリエショップができましたが、まだまだ未完成。今日も夫婦2人で汗を流します。最近、新しくできたのが、屋根付きのガーデンデッキ。昨年5月には、新しくなった香房で1周年を記念したマルシェを開催しました。
「屋根付きのスペースができたので、ワークショップをしていない時はハーブティ―のカフェを開催したい」、東山さんは笑顔で香房の未来を話します。
他にも、「ハーブは料理、掃除、薬に頼らなくても、うがい薬や蒸留して化粧水も作れる。そんな『間口の広さ』が楽しくていつまでも飽きることなく続けられるんです」と、自身を虜にしてきた生活に役立つハーブの様々な効能を活かして、新しい自家製商品の開発を目指します。同時に、香房の開店以来販売している、ハーブティ―やスプレーなどの関連商品も、香房産のハーブを100%使った商品にしたいと意欲を語ります。
この瞬間にも、新しいbroom香房が誕生しているかもしれません。その歩みは、香房のホームページ、Facebookやブログなどに掲載されるので、是非ご覧になってください。 |