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まきべ〜のおでかけ日記
いすみライフマーケット
NPO法人 いすみライフスタイル研究所

スタッフオススメ特情報

第10回
いすみの海の幸を楽しめる
漁師の店「いさばや」

文章:江崎 亮 写真:三星千絵、江崎 亮
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今回は、夷隅東部漁業協同組合が経営する直売所「いさばや」をご紹介します。
「いさばや」とは「漁場(いさば)屋」、漁師が営むお店、という意味です。

この「いさばや」は、大原漁港の「せり」が行われる市場に隣接した一角にあります。
この大原漁港、最近(6月2日)、いわしが200トン以上も打ち上げられたことで有名になりました。

いさばや外観
店内1 店内2
店内3 「いさばや」では、この漁港で水揚げされたり、房総の海で獲れた魚介やその加工品が売られています。
また、販売所の隣には飲食コーナーがあり、そこでは、早朝水揚げされた新鮮な魚介を使った料理を食べることができます。
 
取材の前に、「お刺身定食」をいただきました。
刺身が新鮮でおいしかったのは、当たり前なのですが、添えられていた「なめろう*」が食べる直前に捌いて調理されたとわかる新鮮さで、驚きでした。
飲食コーナー 刺身定食

手作り感満載のまだまだ小さな直売所ですが、漁港を盛り上げようと意欲的な取り組みをされています。

※房総半島沿岸部周辺などに伝わる郷土料理。青魚を三枚におろし、捌いた身の上に味付けの味噌・日本酒とネギ・シソ・ショウガなどを乗せ、そのまままな板の上などで、包丁を使って粘り気が出るまで細かく叩いたもの。

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恵まれた漁場「器械根」と時代の変化

マネージャーの中村さん 「いさばや」のマネージャー、中村松洋さんによると、2006年に「いさばや」は設立されたのですが、この頃の夷隅東部漁業協同組合は、年間水揚げが10億円程度で、経営的にぎりぎりのところにまで来ていたそうです。

実は、いすみ市の沖には、「器械根*」とよばれる磯棚地帯(深さ20〜30mくらいの)があり、日本有数どころか世界でも有数の漁場と言われています。その広さは、いすみ市全域と同じくらいと、かなり広大です。
そこに、プランクトンや小魚などがたくさんいて、それらを食べに、いろんな魚が集まってくるのだそうです。
このために、沿岸漁業でもいろいろな魚をたくさん獲ることができ、古くから漁業が栄えてきました。

また、首都圏に近いために、獲った魚をすぐに届けることができたので、「魚を獲るだけ」で生業として成り立ったそうです。
しかし、冷凍技術の発達や流通事情が変わったために、北海道や九州、海外など、遠くからでも新鮮な魚介類を運ぶことができるようになってきました。スーパーに行けば、全国から新鮮な魚介が運ばれてきているのが、誰でもわかる時代です。
首都圏に近いという「地の利」が生かせない時代がやってきたのです。

マネージャーの中村さん
*「器械根」の名の由来はかつて器械潜水と呼ばれる方法でアワビを漁獲していたことからそう呼ばれるようになりました。
「器械根」は、大原漁港から10数キロ沖に広がる水深およそ20m前後の岩礁群で、広さ約120平方キロメートルに渡ります。砂場と岩場が入り組んだ特殊な地形で、ちょうど北上する暖流の黒潮と南下する寒流の親潮がぶつかり合う良好な漁場です。辺りにはカジメの林が広がり、さざえやあわび、伊勢海老、タコ、鯛、アジなどが集まります。
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「いさばや」の設立

当時の漁協の収入源は、
1.組合員からの出資金
2.水揚げ手数料
3.燃料販売費の利益
4.製氷販売費(組合員への)
5.共済事業
6.釣り船の賦課金(お客ひとりあたり7%)
の6つあり、これまで漁協が赤字になりそうになると、燃料費や手数料を上げて、そうならないようにしてきたそうです。
しかし、このやり方だと、自分たちの負担が増えるだけで、何の解決にもならない。
船は減る、組合員は減る、売上げは減る、結果、漁協はさらに収入が減る、そうした悪循環から抜け出さなければいけない。

そこで、外から組合への収入を増やすために、漁協で直売所経営をすることになりました。

漁協の青年部、婦人部の協業体というかたちで、国の補助金を受け、県の指導のもとで「いさばや」が設立されました。中村さんも設立メンバーに参加したそうです。
港にいわしの加工場の詰め所があって、そこがあまり使わなくなったということで、大原水産加工業協同組合に相談して、そこを改修して店舗を作り、営業開始です。

大原漁港1 大原漁港2

2009年、補助金が終わり、ひとり立ちへ。
独立採算の漁協事業になり、中村さんも運営から離れました。

しかし、計画通りに売り上げが伸びず、事業の存続が危ぶまれるようになったため、2010年10月に、中村さんがマネージャーとして復帰しました。

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伊勢海老とタコを2本柱にして販売展開

「これまでの考えだと、魚の値段が安くなっても、その分たくさん獲ってくればいい、となりがちだけれど、もうそれも通用しにくくなってきた。これからの漁師は魚を獲るだけじゃだめだ。自分たちでも売る。そして、観光も」。

復帰した中村さんは、「いすみ・大原」の特徴を活かした店舗づくりを展開してきました。

いすみ市は、伊勢海老の水揚げで日本一なのですが、なかなかそのことが知られていません。
「器械根」は、伊勢海老にとっても繁殖に都合のいい場所らしく、たくさん獲ることができます。

さらに、ここで獲れた伊勢海老は品物がいいそうです。
・身が詰まっている
・甘味があってうまい
・色がいい

日本一の看板 いいものが、せっかくたくさん獲れているのに、知られていない。
それを打開するには、獲っている自分達がアピールする必要を痛感し、店内で活きた伊勢海老や加工品を販売しています。お中元、お歳暮に、よく売れます。
 
また、漁シーズンの時には、伊勢海老を使った料理も食べられます。身はさしみ、頭は味噌汁、半分は焼きで食べます。最近発売された、「伊勢海老天丼」はオススメです。
伊勢海老 いすみ地ダコまる

伊勢海老の次に、目玉となるのはタコです。
なぜタコかというと、タコは産卵のために「器械根」に集まってくるため、たくさん獲れるのです。

このタコを使った料理も今年、開発・販売をはじめました。
「タコ飯」と「いすみ地ダコまる」と名前がついているタコの「メンチカツ」です(写真右上)。どちらも、人気商品として育ってきています。

この他、活さざえと活あわびも漁シーズンの時には扱っています。

こうした積極的な活動を続けていくことで、昨年の311東日本大震災の時に、売上げががた減りになったものの、伊勢海老とタコは売れ、なんとか赤字にはせずに済んだそうです。
また、ネットでの口コミを見ても、評判が年々改善されてきているようです。

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フィッシャーマンズ・ワーフを目指して

漁協直営の店というと、「安い」というイメージがあるかもしれません。
しかし、ここ「いさばや」では決して安いわけではありません。
というのも、ここの値段でいすみ市内の小売の値段が決まってしまうので、安くしてしまうと、市内の魚屋さんの利益を下げてしまうためで、それはできないそうです。
漁業関係者の活性化のために作られたお店ですから、彼らの生活を脅かすようなことはできません。

もちろん、都市部での値段に比べると、安いことは間違いありませんので、「お得感」はあります。

それから、「いさばや」の大きな特徴として、「入札」もできことです。
その時に気をつけていることは、仲買人よりも、高めの値段で買い付けるようにしていること。
そうすると漁師が高く売れるので喜び、一方で、買い付けを頼んだ人も小売価格よりは安く買えるのでうれしい。
さらに、「入札」に参加すること自体も楽しめる。
こういう経験は滅多にありませんので、機会があったら、試してみるのもいいかもしれません。

ちらし 観光地図
※「いさばや」では、サービスの向上や、大原漁港地域の観光拠点の働きもしようと工夫をはじめています。

漁港というところは、国や県でその利用について、さまざまな制約を設けているために、自由に施設を作ったり改修したりすることができないそうです。
例えば、常設の店舗の設置はできないそうです。そこで「いさばや」では、あくまでも「仮設」の施設として作られ、運営されています。もちろん、お客様に快適に使っていただけるよう、可能な限り「常設」のように作りこまれています。

中村さんは、将来、「フィッシャーマンズ・ワーフ」のように、漁港にみやげ物店やレストランが集まる施設にしていきたいと語ります。国内でも、釧路や下関ほか、漁港と商業施設が近接したものがいくつもありますが、そういうものにしていきたいのだそうです。
「漁港に人が集まり、賑やかな方がいい」と、中村さん。

漁協では、魚介の放射能汚染について、市と共同して計測、配慮しています。
里山だけでなく、里海も豊かで、魚介類も豊富ないすみをお楽んでみてはいかがでしょうか。

いすみ夢鯨の会とスナメリクルーズ

中村さんは若い頃、サーフィンに夢中だったそうです。外房地域は、湘南よりもいい波が来るそうで、毎日、風向きから波を求めて外房地域を移動していたのだそうです。
その後、松鶴丸という釣り船の船長として活動、さらには、海つながりで、「いすみ夢鯨の会」の代表も勤めておられます。
 
この会は、いすみ市のサマーフェスタ期間に合わせ、スナメリの生態観察といすみの海の自然観察を中心にすえた「自然観察クルーズ」を実施するなど、「いすみの海」の観光振興に勤めています。
この「自然観察クルーズ」の目玉が、「スナメリクルーズ」です。

スナメリ

スナメリは、アジアの沿岸海域に生息する小型のイルカ。日本沿岸では、銚子沖、瀬戸内海などでの生息が確認されています。このスナメリが、いすみ沿岸2〜3kmの沖を行ったり来たりしているそうで、それを漁船で見に行くのが「スナメリクルーズ」です。
10月の物産まつりに、無料の乗船体験をやっており、とても人気があります。
また、市のサマーフェスタの期間中(7月1日(日)〜8月31日(金))の土日祝日にもやっています。

 いすみ夢鯨の会
所在地:いすみ市大原758
電話番号:0470-62-1569
代表者:中村 松洋
会員数:18人(市内12人、市外6人)
ホームページ:http://satoumi-cruise.blogspot.com/

いさばや地図

 漁師の店「いさばや」(夷隅東部漁業協同組合直売所)
千葉県いすみ市漁港埋立地 大原漁港荷捌所内 電話0470-64-0131
営業時間:9:00〜15:00(食事:11:00〜13:00)
※年中無休
※天候不良などの理由で臨時休業する場合があります。
ホームページ  http://www2.bii.ne.jp/ohara-iseebi/isabaya.html
ホームページ  http://www.aanet.jp/isabaya/

器械根
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