お客様とのやりとりの中で生まれてくるコト
お店のレジ横にあるコーナーで見つけた本「ぼくの名はハル」。
その手綴じの冊子はおかみさんが書いた作品です。
お店の常連の造形作家たべけんぞう氏と2011年の震災後、福島からやってきた犬の物語。手書きで何度も書き直したものを息子さんが文字におこして、ひとつひとつ手作業で本にしました。
「ぼくの名は<ハル>オス犬だけどね。そう付けてもらったんだ。ある日、ぼくはゲンさんに連れられて、お馴染みのパン屋さんに行った。そこでいつものように車の中で待っていた。・・・」
犬のハルの目線で震災のこと、ハルを引き取ってくれたゲンさんとの心のやりとりが物語として綴られています。
おかみさんは昔から書くことが好きで、今でも仕事の合間を見つけては書きものをしています。 他にもお客様とのやりとりの中で生まれてきたものが「夏目漱石のソーダビスケット」(¥200)と「紫蘇入り菓子」(¥170)です。
お店の常連で古い付き合いの関宏夫氏は夏目漱石や正岡子規研究の第一人者です。彼らの日記中に書かれいる菓子を、その文書から想像して、再現しました。
『嬉しい事限りなし、塩気ありて、些の甘みなし、水を塗り、食塩をつけて烙りたるを食う。是亦旨し。食べれば漱石、明治に耽る』
ソーダビスケットは塩がアクセントになっていて、ザクッとした固めの食感が懐かしい素朴なお菓子です。紫蘇入り菓子もゆかりの塩味と香りが後をひくお菓子です。
小麦粉とシンプルな材料で作られたお菓子、約100年前にと思うと、なんて贅沢なお菓子だろうなと思います。
ただ、パンを作るだけでなく、昔の人が食べたであろうレシピを再現してみる、そんな遊び心が麦香村にはあります。 |