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まきべ〜のおでかけ日記
いすみライフマーケット
NPO法人 いすみライフスタイル研究所

自分生活@いすみ

第6回
宇賀神さんの海辺のアトリエで創作活動満喫ライフ

文章:大花慶子 写真:三星千絵
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宇賀神利美さん(52才 神奈川出身 粘土作家・ホームヘルパー)
工房「蛙の午睡」
 
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宇賀神さん  「すてき!なんて愛らしいの!」思わず手にとってしまう作品の数々。粘土で作られた動物をモチーフにした置物や中国古代文字が入ったアクセサリー、箸置き、ストラップなど。
ナチュラル系のマーケットで出会った宇賀神さんの作品は、どこかユーモラスで、でも、精巧に作られていて。
テーブルに並んだ作品に、作った人の温もりを感じて、思わず足を止めて見入ってしまいます。
今回は、そんな存在感のある作品づくりを続け、田舎暮らしを楽しむ女性アーチスト・宇賀神利美さんです。
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潮騒の聞こえる工房で愛猫と住まう

スタッフがお邪魔した岬町にある宇賀神さんのご自宅兼工房は、海まで歩いて10分。
波の音が聞こえてきます。

ここは、もとは数年前に亡くなったお母さんが家族のために購入した「海の家」。
当初、10畳のリビングに6畳のロフトのみの別荘として作られたのですが、宇賀神さんが永住するにあたり、4畳半の寝室と12畳のアトリエを増築しました。
庭にはできた実で自家製ジャムもつくれる果樹や小さなパティオが、室内には猫タワーがあったりと、楽しく暮らしている様子が伝わってきます。
現在宇賀神さんは、ご自身の作品をマーケットや通販などで販売しながら、週2日、訪問介護の仕事をしています。

「本当は創作活動に専念したいけど、やっぱりそれだけだと経済的にゆとりがなくて。でも、介護を担当しているお年寄りは皆さんやさしい方で、野菜をくれたり、独り身の私を心配してくれたり(笑)。」

今は、作品を通していろいろな出会いもあり、無理のないこの生活のリズムが合っていると笑います。

宇賀神さんのアトリエ兼住居と愛猫のまこ
宇賀神さんのアトリエ兼住居と愛猫のまこ
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創作三昧の暮らしを求め、「いすみのアトリエ」へ

宇賀神さんは1959年に鎌倉に生まれました。
4人兄弟の下から2番目(次女)で、お父さんは童謡作曲家の宇賀神光利さん。7つの時にお父さんを亡くし、お母さんが女手ひとつで4人の子供を育てました。

宇賀神さんは小さい頃から油絵の先生の元へ通わせてもらったそうです。高校卒業後は、画材メーカー、広告代理店、出版社などでOLをしながら、絵を学び続けます。
出版業界専門の派遣会社に登録して働いていた時、時代はバブル期で、校正の仕事だけで時給2500円もあったそうです。しかし、不規則な生活と目を酷使しすぎてダウン。
「これから必要とされる資格を取ろう」と、在宅でできる老人介護・ホームヘルパーの資格を取りました。宇賀神さん30代の頃です。

いすみ市の岬町には、2001年、東京の調布市から転入しました。
都内から比較的近いことと、海が近く自然がたくさんあるこの地域の環境が気に入っていたからでした。
「よし!ここで創作三昧の生活をしよう!」と心に決め、お金のための仕事をせず、好きなだけ創作する日々を送ります。

宇賀神さんの油絵「光になる」
宇賀神さんの油絵(「光になる」 F10号(53×45.5p) 1995年【個人蔵】)サイト「蛙の午睡」より
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お坊さんの「声明」に感動し、粘土作品制作へ

宇賀神さんが油絵以外に大切に手がけているのは、粘土で作られた「そっくり人形」。
人形はまるで生きているように、表情も豊かで、今にも動き出しそうです。

「『声明(しょうみょう)』ってご存知?お坊さんがお経に節をつけて一斉に唱えるんですけど、その唱和に感動して。それからそのお坊さん集団のファンになって、彼らをモチーフに作品を作ってみたの。思いの他、喜んでもらえて。それまではずっと油絵を描いていたけど、ほとんど手がけたことのなかった立体の粘土作品も面白いなあって思って。」

宇賀神さんの作品づくりはファンだったお坊さんたちを喜ばせようと作ったのがきっかけだったそうです。
「蛙の午睡」のサイトで、当時宇賀神さんが親しみと愛情を込めて作った、天台宗や真言宗豊山派のお坊さんたちの人形を見ることができます。

声明公演で、会場の南青山スパイラルホールに展示された作品
2005年1月声明公演で、会場の南青山スパイラルホールに展示された作品(「蛙の午睡」より)
蛙人形
蛙人形
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ときどきマーケット。そして、いすみのコミュニティ参加

宇賀神さんが海辺のアトリエで創作三昧の生活をはじめて10年。
以前取った資格をいかして、ホームヘルパーとして働くことで、あまり交流のなかった地元の方達と知り合う機会が増え、同時期に出店しはじめた地域のエコ系マーケットでは、移住者の多い出店者同士でとても仲良くなることができました。

マーケットでは、粘土細工の雑貨やアクセサリーの他に、中国古代文字をモチーフにしたオーガニックコットンのTシャツやエコバック等を販売しています。
オーガニックコットンにこだわっているのは、なるべく地球に負担をかけず、肌にもやさしいものだから。少しでも商品を通して地域の人に環境を意識して欲しいから。
また、洋服の草木染めでも、なるべく地元に住んでいる方達にお願いしているそうです。

宇賀神さんの作品は、いすみ市内の「外房長屋」にも置いてあり、購入することができます。

ちなみに宇賀神さんは「ゆるい」ベジタリアン。市内でマクロビオティックの料理研究家をしている「ブラウンズフィールド」の中島デコさんに出会い、食の大切さを知り、なるべく地域で取れた安全なものを心がけています。

そして、いすみの地域通貨のコミュニティにも参加し、声をかけあって一緒にマーケットに出店したり、情報交換するなどして、つながりを大事にしています。

マーケットに出店する宇賀神さんと作品
マーケットに出店する宇賀神さんと作品
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夢はアートコミュニティづくり

作品作りをする宇賀神さん  試作品
作品作りをする宇賀神さん さまざまな技法で作った試作品

現在、宇賀神さんは、多種多様な技法での作品づくりに取りかかっているそうです。
教えてくれる人が近くにいないので、本を読んで独学。
失敗もあるけど、夢があるので、苦痛ではありません。

宇賀神さんの夢…。それは、いつか、この地域にアートコミュニティ(工芸村)をつくること。
そのためにまず、粘土の魅力や技法を伝えるための教室を開きたいそうです。
アートコミュニティでは、モノづくりに興味のある人が誰でも気軽にやってきて、自然の中で作品を表現し合ったり、学び合ったり。

いすみでは、少子高齢化がどんどん進み、空き家や空き店舗、空き施設が増えています。
一方で、首都圏では物価も家賃も高く、空気も悪い環境で、アート活動をしている大勢の人達がいます。そこで、彼らに場所や機会を提供することができれば、地域の活性化にもなるし、文化の発展にもなるのではないか?そして、この地域でがんばっているアーチストの活躍の場をもっと広げることができたらと考えています。

「いすみはとても好きな場所。移住してきて10年ちょっとだけど、もうすっかり馴染んでいます。作品づくりの面白さを伝えながら、いろいろなことをやっていきたい。」
宇賀神さんの笑顔が、これからの「いすみ」のやわらかな光になることを感じて、アトリエを後にしました。

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