イベント案内癒し・パワスポめぐり自分生活@いすみスタッフオススメ  得  情報
いすみつけむすびISUMIX Lifeいすみ暮らしお役立ち情報
癒し・パワスポめぐり
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
まきべ〜のおでかけ日記
いすみライフマーケット
NPO法人 いすみライフスタイル研究所

癒し・パワスポめぐり

第11回
「古き良きもの」を大事にし“今”へ - 昔の姿を残す里山「正立寺エリア」

文章、写真:三星千絵
---

四季折々な姿を見せる22戸の小さな里山集落、正立寺

正立寺の田んぼ

里山観察会

【写真】里山観察会は市内外問わず約20名の方が参加。森林インストラクターと正立寺地区の有志で地区を散策しました。

2013年12月のある晴れた土曜日。
気持ちの良い青空の下「正立寺での里山観察会」が開催されました。

いすみ市まちづくり団体でもある『しあわせな生活づくりの郷』と『いすみ蒔ネットワーク』共催のイベントです。

今回の里山観察会の舞台となったのはいすみ市正立寺地区。
旧夷隅町内の大多喜町に隣接する地区です。

昔ながらの里山風景の残る自然豊かな場所。
現在22戸、72名が暮らすこの集落にも、日本の多くの地域が抱える高齢化の課題があります。
その課題を解決するヒントが見つけられないかと千葉大学大学院工学研究科デザイン科学専攻デザイン文化計画研究室の学生が地域の人と一緒に取り組んでいました。

里山観察会

---

きっかけはフィールドワークの授業。ひとりの学生との出会いとはじまり。

立原さん地域の方と学生との橋渡し役として中心で活動しているのは立原さおりさん。
きっかけは在学時代に参加したフィールドワークの授業でした。

研究テーマで正立寺地区を訪れ、実際にそこで暮らしている方のお話を聞き、暮らしぶりをまとめました。

授業という大変短い時間だったにも関わらず、そこでの出会いと経験は立原さんの中で大きなものとなり、もっと地域の方のことを知りたい、みなさんと一緒に何かしたいと思うようになったのです。

地域の方もそんな若者の思いに応えるかのように「それならば一緒にやりましょう」と『しあわせな生活づくりの郷』を設立、活動を開始。
2012年から「いすみ市まちづくり提案事業」に採択されました。

---

「眠っていた場」が再び動き出す。地域住民と学生の協働作

「いすみ市まちづくり提案事業」を進めると同時に学生の卒業論文のテーマに沿った活動を展開。

長く耕作放棄地となっていた田を復活させ、田植え、草刈り、稲刈りを体験したチーム。
里山の活用と再生をテーマに手入れを進め、出た木材で皆が集える広場をつくったチーム。
30年ほど前から使われなくなってしまった里道を復活させたチーム。

どれも正立寺地区のみなさんの協力がなくてはできるものではありません。
立原さんを中心に、千葉大の学生たちも度々通いながら一緒に活動を進めました。

活動報告会では、大学の関係者だけではなく、地域の方も多く参加。興味深く熱心に発表を聞き、意見も交わされていました。

この様子を見ていた私は耕作放棄地や閉ざされていた道のように「眠ってしまった場」が新たな交流を生む場所へ変わっていく様を、ここがきっかけにこれから新しいことがはじまるのかもしれないことを感じました。

報告会
報告会

【写真】里山観察会では皆でつくり、丸太を活用した広場で休憩。交流の場となりました。整備を行った里道を通り、大多喜方面へ。かつては隣町との交流の道だったそう。

---

「暮らしぶり」にある小さな知恵や術

正立寺地区はとても自然が豊かで、棚田や花木がとてもきれいなエリア。

正立寺案内パンフ通りから集落に入る道は1本しかなく、よほどの用事がない限り、地区の方以外は入ってくることはありません。

こうした、ひっそりとたたずむ集落で暮らす人々の日常には、様々な知恵や技術が眠っていました。
たとえば、田んぼの周りを囲う様にして咲いているツツジや水仙の花。
「何本目の花からウチの田んぼかわかるように植えたんだよ。どれも一緒の田んぼだからわからなくなっちゃうでしょ」。
今までで表にはでることのなかった「暮らしぶり」を知ることで、そんな小さな日々の取り組みが正立寺地区の全体の景観の美しさと雰囲気を生みだしている事を知りました。

【写真】(上) 学生たちを中心に作成した正立寺の暮らしを紹介する冊子。地図は散策マップとしても活用できます。
(下)田植え時期の景色。ツツジがきれいに咲いています。

正立寺の田んぼ

---

正立寺魅力の秘密、「古き良きもの」を残す「当たり前」。

正立寺地区の皆さんにとって、若い人たちが来てくれることはとてもうれしいことのよう。
「パワーとエネルギーをもらってますよ」と言う区長の麻生さんの表情には、うれしさとやさしさに満ちていました。
地域の方が「当たり前」にずっと続けてきた事に興味関心をもってくれること、感動してくれることは、皆さんにとってうれしいことのようです。

報告会で「正立寺での里山観察会」の里山散策の間も、「ここにはたくさんの花が咲くんだよ」、「実は桜の名所でね」、「ホタルが一面きれいなんだ」と、色々とお話をして下さいました。

この豊かな自然を大事にしたいという共通の思いがあれば、世代や環境を問わず、何か通じ合えるものがあるのかもしれません。
遠くから聞こえるししおどしの音も、鳥のさえずりも、多様な花を咲かす草木も、ずっと昔のまま、時が止まったかのような感覚です。
「古き良きもの」がまさにそのまま残っているのです。

日々が慌ただしく過ぎていく中、社会も大きく変わっていきます。その変化を感じる度に「このままではいけない」ことを、もしかしたらその地域で昔から暮らしている人達が一番感じているのかもしれません。
どうやって変わっていくのがいいのか。考えてもなかなか答えが出るものではありませんが、正立寺地区の皆さんは、若者達と接する中で「変わっていくこと」、「変わらないもの」に、お互いに気づき合うことができつつあるのかもしれません。

地域の方が望む変化のスピードに若者たちが歩み寄り、歩幅を揃えながら一歩一歩ゆっくり進んでいく。
お互いにとっての“ちょうどいいペース”で進んでいくことが、なんともいすみらしいように思いました。

Copyright (C) NPOいすみライフスタイル研究所 all rights reserved.