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まきべ〜のおでかけ日記
いすみライフマーケット
NPO法人 いすみライフスタイル研究所
 

自分生活@いすみ

第21回
愛する地域といすみ米のために握る、かっつぁんのおにぎりライフ

文:鈴木康平 写真:坂本勝彦、鈴木康平、宇井里実、江崎亮
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『おにぎり工房かっつぁん』坂本勝彦さん

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坂本勝彦さん(53)は東京都生まれ。都内の大学卒業後から営業畑一筋で働き、11年9月からいすみ米で握るおにぎりを提供する「かっつぁんおにぎり」を経営しています。

移住14年目の昨年10月、店舗をいすみ市に移転し、「おにぎり工房かっつぁん」としてスタートしました。寒さ厳しい2月の初旬、工房を訪ね、いすみ米や地域への思いを伺いました。

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いすみ米の「本当のおいしさ」を味わってもらうために

おにぎり屋の朝は早い。
2月6日の日曜日、早朝8時から始まる大原漁港朝市へ出店するため、いすみ鉄道のエプロンを身にまとい、坂本さんは深夜1時から仕込みを始めました。
作るのは、朝市の定番、「たこ飯」を中心に、鮭、おかか、焼きおにぎり用の塩むすび。朝市の時は120〜130個を仕込みます。

炊飯器から炊きあがったお米を取り出す時、坂本さんはしゃもじを使いません。
「米が潰れて、味が落ちてしまう」、手袋をした手でお米をボウルに移し、握ったおにぎりは10個ずつ並べられ、表面が乾かないようラップをかけ、「熱冷まし」の工程に進みます。

坂本さんが「もっとも大事な工程」と話すこの作業。30分程かけて、余分な水分を取り除きます。もし、冷まさず袋詰めすると、水気でぐしゃぐしゃになる。
時折、おにぎりを手に取り、接地面に付いた水滴を丁寧に拭きとる。
「ここだけ柔らかくなってしまう。自分が食べるなら、それは嫌だ」、このひと手間が、よりおいしいおにぎりを生み出します。

坂本さんの前職は営業マン。出張などで全国各地を駆け回り、その土地のうまい物を食べるのが楽しみでした。その中でも、群を抜いていたのがいすみ米の美味しさ。坂本さんは力のこもった口調で語ります。
「甘味、粘り、そして何より、冷めた後の味が他の米と違った。炊き立てのご飯が美味しいのは当たり前。冷めた後の『本当のおいしさ』を味わって欲しい」。

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一目惚れだった、いすみ市との出会い

15年前、今も住んでいるいすみ市増田に移住してきた坂本さん。
移住前、住んでいたのは東京、亀戸のマンション。当時、お子さんが3歳になったばかりでした。
「子供の動く音がうるさい」、音が響かないよう床にマットを敷くなど、対策をしても鳴りやまない近所からのクレームが頭痛の種でした。

「上から抑えるような教育はしたくない」、そう語る坂本さんは、「地べたに暮らして、子供たちを自由に遊ばせてあげたい」と、移住を決意。
真っ先に候補として挙がったのが、趣味の釣りを通じて、毎週のように訪れていた房総半島でした。

「最低、たんぼ一枚分の土地が欲しかった」。

当初、坂本さんはこんな条件の物件を探し、釣りでよく通った内房地域を駆け回ります。しかし、「内房は海からいきなり山で、平地があまり無いんだよね」と、外房を含めた、房総半島全域を1年かけて巡りました。そして出会ったのが、いすみ市。
目の前に広がる田園風景と、時折駆け抜けるいすみ鉄道の姿に、「見た瞬間に決めた。一目惚れだった」と当時を振り返ります。家族で移住し、平日は会社で寝泊まりして、週末は田舎暮らしを楽しむ、新たな生活が幕をあけました。

今では人数が増えた移住者も、15年前は多くありませんでした。坂本さんの部落でも、坂本家を含めて2世帯のみ。地域に溶け込む秘訣を聞くと、こう答えが返ってきました。
「何でも、自分から足を踏み入れていく」、区長への挨拶から始まり、そこで行事の情報を仕入れ、必ず顔を出すよう心掛けました。時に「会社で何かあっても、行事を優先させた」ほど。1つ1つの心がけが身を結び、「移住後の人間関係には、あまり苦労しなかった」、そう話しています。

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愛する「いすみ米」のために、おにぎり屋をオープン

「ITは日進月歩で進む世界。その中で迅速な意思疎通ができなくなった」 。

退職のきっかけは、勤めていたIT関連会社の社長が倒れたこと。
当時役員として会社の中枢を任されていた坂本さんは、自らが置かれた状況をこう話します。
そして、入社時20人だった従業員が100人規模となり、自社ビルを構える企業に成長した姿を見て考えます。「自分はここでの仕事をやりきった。これからは自分の道を進もう」 。

しかし、「今やめて、何をすればよいのか」、不安が頭を過ります。移住後、本業の傍ら、米作りを手伝いながら、いすみ米の販売まで行い、本職では味わえなかった「物を作る楽しさ」も感じていましたが、「利益はほとんどなかった。これでは自分で飯を食べていけない」、自らが進む道が定まらないまま、3年の月日が流れていました。

転機が訪れたのは、子供の運動会で食べたおにぎりが、あまりに美味しく思った直後に、駅構内で「おにぎり屋」を目にした時。「米そのものを売るのではなく、おにぎりにして売る」、今まで考えていない発想でした。
「これならいける」、そう直感した瞬間、「頭の中が全ておにぎり屋になった」と話します。長年、目の前を覆っていた霧が晴れた瞬間でした。

おにぎり屋に人生のレールをつないだ理由は、もう1つあります。移住して10年が経ち、坂本さんの周辺でも、半数の農家が離農しました。
「自分が愛した風景が無くなってしまう」、そう危機感を感じた坂本さんは「作った米を使う人がいれば作り手はいなくならない。俺が買い取るから、続けて欲しい」と懇願。
いすみ米と、地域を守るための挑戦でもありました。

2011年5月31日、退職。同年9月1日、いすみ市から通える、1番の人口集約地である、千葉市千城台にお店をオープン。
開店までの3か月は、各地でおにぎりを食べ歩き、各地から具材を取り寄せ、いすみ米との相性を徹底研究。「俺は凝り性だからね。何でも徹底的にやらないと気が済まないんだ」、店頭に並ぶおにぎりに入った具材の多くは、この3か月で決まった、今でも続く「自慢の味」です。

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「いすみ米のおにぎり」は地元にも受け入れられ、店舗を移転

「わざわざ遠くからお客さんが来てくれるお店」、それがお店のコンセプト。
開店2年目から、県内各地でのイベント出店を拡大。出店仲間とのつながりを得て、「普段なら絶対に来ない人が(いすみ米の)味を知ってくれる」という手ごたえを感じていました。3年目にして、お店は黒字化を達成しました。

しかし同時期、店の近所の商店街が衰退。「当初、売り上げの+αだったイベント出店が、売り上げ減の穴埋めになっていた」、坂本さんは当時の心境を話します。
一方で、外房中心のイベント出店を通して、ある事実にも気付き始めていました。「いすみ米のおにぎりは、『地元』でも通用するのではないか」

千葉市での開業は、「地元ではいすみ米は当たり前に食べられているから」というのも理由の1つでした。しかし、出店の度、「今度はいつ出店するの?」というお客さんの声に背中を押され、いすみ市への店舗移転を決意。
その決断に、迷いは微塵もありませんでした。

15年10月、自宅の敷地内に、「おにぎり工房かっつぁん」をオープン。当初は厨房だけの設計でしたが、「出店仲間の声を受けて」、販売・飲食スペースも設けました。
そして、以前よりも広域でイベント出店が可能になり、同年11月には、地理的な理由で出店を断っていた、館山市でのイベントにも初参加しました。

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「いすみ米」のさらなる発展のために

「これからは、お店に足を運んでもらえる工夫をしていきたい」。

坂本さんは今後の方針について話します。新たな活動の1つとして、「1dayシェフ」を毎月1度開催する予定。
1月は、「ゆるゆる マクロビ料理人」でイラストレーターのどらさんこと、せきねゆきさんと「「まかない食堂 どらかっつぁん」を開催。今後も様々な人と開催していく予定です。

「おにぎり屋は大変だよ。教科書もないし、単価が低いから利益がでづらい。好きじゃなきゃできないよ」。
坂本さんが話すこの言葉の背景には、イベントでは完全密閉・原材料表示義務など、ご飯を扱うための制限が非常に厳しい上に、大量生産されるスーパーやコンビニと価格比較されるという現状があるからです。

だからこそ、「やりたい気持ちがあるなら、ノウハウは何だって教える。それはライバルじゃなく、『仲間』だから」。坂本さんは新しくおにぎり屋を目指す人たちにエールを贈ります。

坂本さんは独立・開業するまで、飲食や食品業界で働いた経験はありません。それでも、全て独学で試行錯誤を繰り返して、今年5年目を迎えます。

「人間、やる気になれば何でもできるんだよ」。

今後も、愛する地域といすみ米の発展のため、全力で走り続ける坂本さんから、目が離せません。

 おにぎり工房かっつぁん
住所:〒298-0117 千葉県いすみ市増田587-2
電話:043-312-7008
メール:katsu379ya@gmail.com
HP:http://katsu3.jimdo.com/
Facebook:https://www.facebook.com/katsu3onigiri/

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